不妊治療・検査
検査の評価にはそれぞれの検査を実行する最適のタイミングがある一方、検査を繰り返すことでより正確な評価につながることもあります。加えて、過去の検査から大幅に時間が経過している場合は加齢とともに環境の変化もあり当然異なる結果が生ずることも予想できるので現在の状況を正確に把握する意味でも当院で改めて一通り再検査されることをお勧めします。
不妊治療
不妊治療について
今や不妊治療といえば体外受精一色の感があります。2015年の統計では日本で42万4151件の体外受精がおこなわれ5100人の出生を数えました。実に20人の新生児に一人が体外受精ベビーですが、ここには大きな問題点があります。一時に比べ体外受精でも多胎の頻度も低くなり、結果として低出生体重児の出生も減少していることは確かですが、妊娠中のさまざまな合併症(前置胎盤、癒着胎盤、妊娠性高血圧など)の頻度は依然として一般不妊治療や自然な妊娠に比べると多いようです。

最新鋭の透視レントゲンを導入
そこで当医院では、可能な限り人工授精までのテクニック(精液の調整まで)で、目標(妊娠)を達成してあげたいと考えております。不妊原因のなかで最も多い(30%)卵管性不妊に関しては、京都でも導入の少ない最新鋭の透視レントゲンを備え、卵管采(排卵した卵を捕まえるところ)からの造影剤の流出の状況を細かく検討して治療に役立てています。
人工授精
パートナーに問題があるのは時代の反映でしょうからヒューナー検査が悪ければ積極的に人工授精にステップアップしましょう(片側以上の卵管の通過性があれば)。当院は細くやわらかい素材のチューブを用い出血させないことと少なめの精液(0.4ml)をいれることに注意を払っています。処置後は必ず超音波で注入した精液を確認する一方、排卵前か排卵後かを見ております。
より詳しい方法についてはパンフも用意していますのでご希望のかたは申し出てください。
2018年3月末までに人工受精で70名の方が妊娠していますが1回目から3回目までに58名の方が妊娠し実に83%を数えます。やはり3回までに妊娠させてあげたく思います。
人工受精のタイミング(私のクリニックでは排卵直後が良いようです)とその時のパートナーの状態、奥様の卵の質が妊娠の成否を決めるようです。
予防不妊(女性・男性とも)
生活、栄養指導、禁煙、冷え症対策を中心としてきめ細かにお話し基礎的な体力や精神面の向上を促し
妊娠への近道を作ってさしあげたいと思います。
月経周期が極端に長い(45日以上)方や無月経歴が長かったり糖尿病家系の方に特にお勧めしております。
一般不妊治療・人工受精の費用助成
一般不妊治療の費用についてはむろんのこと、さらに人工受精についても申請することで京都府からのある程度の助成は受けられます。詳しいことは受付でお聞きください。
不妊治療の実績
2010年11月~2018年3月までの不妊症例 527例
開院(2010.11)から2018.3までの不妊症例527例中310例の妊娠(尿での妊娠反応陽性)を数えましたが(妊娠率60%)流産が52例(17%)と高く、特に初診時35~39歳は24%が流産しています。
このデータからはやはり
早い受診をお勧めします。
2010年11月~2013年7月までの不妊症例 187例
開院(2010年11月)から2013年7月までの不妊症例187例を解析してみました。
初診年齢と妊娠、初診から妊娠反応陽性までに要した月数をグラフにしてみました。
難しい症例はどうしても治療が長引く傾向にありますが時にはお休みの期間も設けていただき、ともにがんばりましょう。

プライマリーケア(初期対応)
当院の役割は極力、偽陰性率を下げる(癌を見逃がさない)努力を日々怠らないようにすることです。子宮頚がん検診の際には綿棒よりブラシを使ってより多くの細胞を取る一方、液状検体にして不適切な標本を可能な限り少なくしております。
良性腫瘍については手術がどうしても必要なのか?お薬でも対応可能なのかを患者さんの背景も考慮にいれて判断しています。即ち、緊急性の高いもの、自覚症状の強いもの、腫瘍サイズの大きいもの、悪性の可能性がマーカーや画像診断上疑われるものお薬での治療に抵抗するものなどには手術を勧めています。手術は膣からのアプローチ可能な子宮鏡下手術、開腹ではカメラを使った傷の小さな腹腔鏡下手術を勧めております。
子宮筋腫・子宮内膜症
子宮筋腫・子宮内膜症については、近場の病院でMRI(核磁気共鳴)を撮影してもらい、より精度の高い診断をしております。手術適応があれば患者さんの希望を取り入れながら最適の病院をご紹介しております。
卵巣にできる子宮内膜症(チョコレートのう腫といいます)については年齢と大きさから悪性化にも注意を払っています。
子宮内膜ポリープ
不正出血で来院される方に意外と多く認めるようです。
超音波でこの病気を疑い、子宮ファイバースコープで確かめ必要があれば摘除いたします。
子宮体がん
子宮頚がんに比べ偽陰性率が高いと言われているので細胞診が陰性でも内膜の厚い方には内膜の組織診をするよう心がけています。
卵巣腫瘍
卵巣腫瘍(とくに奇形腫)は見逃さないようにしたいものです。
甲状腺や乳腺についてもご希望に応じ積極的におこなっています。
子宮筋腫
きわめてポピュラーな病気ですが、まだ赤ちゃんがほしい方にはその筋腫が不妊に関わっているかを適切に判断すること、また挙児希望のないかたでは筋腫が現在の自覚症状に本当にリンクしているのか、また貧血に関わっているのかを判断し手術の可否を決めています。
子宮内膜症
初婚の高齢化や妊娠の先送り傾向からこの病気は増えています。問診と内診でその可能性を疑い、超音波をおこないますが、診断しやすいのは卵巣にできる内膜症(チョコレート嚢腫と呼びます)でしょう。ポイントは月経時の痛みや不妊との関わりですが最近では癌化の問題(当院はその登録施設です)も取りざたされてきています。長く付き合っていかなくてはならないやっかいな病気ではありますが最近多くの治療手段(お薬も手術も)に恵まれています。生理痛がどんどんひどくなる時は早めの受診をお勧めいたします。